マスターズの主役はもちろん選手。
マスターズに出場できるのは、歴代優勝者を始め、世界ランキング50位以内、マスターズを除く3大メジャーの過去5年の優勝者など厳しい条件をクリアして招待された世界でも100人に満たない名手達だ。
ゴルフコーチという仕事柄、これまで何人ものプロゴルファーのスイングを目にしてきたが、これほどハイレベルな選手を一度に見る機会は初めてだ。
右を見ても、左を見ても憧れのスター選手ばかりという状況に、冷静に優先度を決めるのにかなりの時間を要してしまった。
今回私がフォローした選手は、直前で出場が決まったスーパースター「タイガー・ウッズ」、大会時点で世界ランキング1位の「ローリー・マキロイ」、今大会優勝候補に挙げられていた全米期待のホープ「ジョーダン・スピース」、そして天才レフティ「フィル・ミケルソン」と、ミケルソンと練習ラウンドを共にしていた「リッキー・ファウラー」だ。
テレビや雑誌の連続写真では何度もみているそのスイングだが、生で見るとその力強さ、ボールスピード、想像を超えるボールの高さ、まるで意思を持ったように止まるスピン。
全てが別次元だった。
また今回もっとも感動したのは、そんなマスター達の真摯な振る舞いだ。
パトロンから声をかけられると目を見てニコッと微笑み「Thank you.」と応えたり、ホール間のインターバルではパトロンが差し出した手に軽くタッチをしながら歩く、スイング中に物音がしても動じることもなく、その堂々とした態度、パトロンへの配慮と余裕に、私が知っているプロゴルファーとの技術以上の差を感じた。
マスターズに集うのは、ゴルフのマスター(名人)だけではなく、ファンを楽しませる最高のマスター(達人)だった。