ドナルド・ジェームス・ロスは、アメリカのゴルフ発展期に活躍したコース設計の第一人者で、生前に約400のコースを設計または再設計に関わったと言われている。
ロスは故郷のスコットランドでプロゴルファー兼グリーンキーパーとして※オールド・トム・モリスのもとでSt.AndrewsとCarnoustie Golf Linksで務めた後、1900年にノースカロライナ州に移り住む。
※オールド・トム・モリス
全英オープンを4度制したゴルフの名手であり、グリーンキーパー、クラブメーカー、ボールメーカー、 コーチ、コースデザイナーでもある。近代ゴルフ源流と言える人物。
ロスは設計思想に関して「ゴルフは喜びではなく苦行でなければならないこと、そしてコースとはゴルファーの公正な試験の場であるべきだ」と述べている。
そんなストイックなロスの最高傑作と言われるのがパインハーストNo.2。
美しい眺望もなければクリークや人工的な池もなく、荒地にフェアウェイとグリーンがあるだけという至ってシンプルな設計。
「シルクハットグリーン」と呼ばれるドーム型のグリーンはピンポジションによって攻略できるルートが1箇所しかないと言われている。
そんなロスはこのNo.2の中でも特に3番ホールのグリーンが気に入っており、そのグリーンの横を終の住処とした。
ロス宅の前からみた3番ホールのグリーン。
ロスは生前にこのホールを見て、何を思っていたのだろうか。
ロスの思想にならい、苦行のように公正すぎるテストで赤点をもらった。
ティーショットはウェストエリアのワイヤーグラスに捕まりレイアップするのが精一杯、会心のティーショットを放ってもPar4で250Yの距離が残り、グリーンを捉えたと思う完璧な2ndショットがシルクハットのツバをつたってバンカーへこぼれていく。
最高のショットが通用しない度に「ゴルフを知った気になるな」と喝を入れられているようだった。
「もっと上手くなりたい。そして、次は必ず良いスコアでプレイしたい。」
コーチになってからもう何年も自分のゴルフのことなんて考えなかったのに、久しぶりに心が熱くなった。