マスターズの本戦が始まる前日の水曜日。
クラブハウスの東に位置する9ホール・パー27のショートコースではPar3コンテストが開催される。
今年も本戦には出場しないジャック・ニクラウスが出場してホール・イン・ワンを達成して盛り上げた。
選手も自分のパートナーや子供にキャディバッグを担がせて登場する人気のファンイベントだ。
8時より少し前にコース近くに車を停めて、開場とほぼ同時にコースに入った。
真っ先にショートコースに向かったが、既に場所取りをしようと沢山の人。
整備が終わるのをを1時間ほど待って、セキュリティから入場の合図が。
運良く最終ホールの最前列がちょうど一人分だけ空いていた。
Par.3コンテストは水曜日の正午からスタートされるので、椅子を置いて場所を確保。
ちなみにマスターズではこの椅子を購入して観戦した場所に置いておくと、その場を離れてもその日は自分の席として利用できるシステムだ。
場所が取れた私はPar.3コンテストが始まるまでの時間を楽むことにした。
最初に向かったのはショートコースのすぐ近くにあるクラブハウスだ。
クラブハウスでは写真撮影のサービスを行っていて、カメラマンがクラブハウスをバックに写真を撮ってくれる。
IDが書かれたカードを受け取って、専用サイトにアクセスすると無料で自分の写真がダウンロードできるシステムだ。
その後ドライビングレンジを経由して、16番のティーで見学していると気になるペアリングがやってきた。
84年と95年にマスターズを勝ったレジェンド「ベン・クレンショー」。彼は今年が最後のマスターズ出場だったのだが、その最後の練習ラウンドを「タイガー・ウッズ」「ジョーダン・スピース」とプレーしていた。
クレンショーがマスターズを優勝した95年はタイガーが初めてマスターズに出場した年、そしてクレンショーが最後にマスターズに出場した今年はスピースが初めてマスターズに優勝した。
こうして受け継がれる伝説。こんなドラマのような偶然が起きるのも、オーガスタに棲む魔女のおかげなのか。
正午を過ぎるとPar.3コンテストが始まった。
最終ホールに席をとった私は選手が来るのをグリーンサイドで待った。
ぞくぞくと選手がやってくる。
普段は真剣な表情のマスター達もここではパパの顔だ。
ひときわ大歓声を浴びたのは「ジャック・ニクラウス」「ゲーリー・プレイヤー」「ベン・クレンショー」のレジェンド達だった。
この日ホールインワンを決めたニクラウスがグリーンに上がるとスタンディングオベーションで迎えられると、「ジャック!」「ベン!」という掛け声が飛び、その光景から彼らがパトロンに敬意と愛情を持って迎えられている事を肌で感じた。
そして彼らはホールアウトすると待っている子供達全員にサインをし、それを後続組をプレーするマキロイら次世代の選手が見ていた。
こうして若い選手はここでのふさわしい振る舞いを学び、マスターズという大会だけに存在する特別な文化が受け継がれる。