「初めての人と一緒になると、急に緊張してしまう」
「人に見られると、スイングがぎこちなくなる」
「後ろの組が気になって、焦ってしまう」
こうした“感情に飲まれる瞬間”は、多くのゴルファーにとって共通の体験かもしれません。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。
その「緊張」や「不安」は、本当に“悪いもの”なのでしょうか?
今回はいちゴルファーとして、またスポーツメンタルコーチとしてこうした感情との付き合い方について考えてみたいと思います。
緊張は「悪」ではない
まず知っておいてほしいのは、緊張は決して悪いものではないということ。スポーツメンタルの世界では、緊張は「自然な防衛反応」であり、「目の前の出来事に真剣に向き合っている証拠」と考えられています。
心拍数が上がり、動きが硬くなり、呼吸も浅くなる。そんな反応は脳が「ここは大切な場面だ」と認識してくれているサインです。これは、自分がこれから大事なことに挑もうとしている証拠でもあるのです。
だから大切なのは、「緊張している自分を否定すること」ではなく、その緊張をどう受け止め、どう付き合っていくかという視点です。
不安は“向き合う”もの
不安な気持ちを完全になくすことは簡単ではありません。
だからこそ、私がゴルファーとしておすすめしたいのは、不安と正面から向き合うスタンスを持つことです。
実際、不安から目を背けずに「かかってこい」と立ち向かうと、不思議と心と体は落ち着いていくものです。
守ろうとすればするほど不安は強くなり、逃げの姿勢では余計に飲まれてしまう。これは、私自身の体験から何度も感じてきたことです。
困難と向き合う覚悟が、突破口を開く鍵になると信じています。
私たちは“なりたいゴルファー”を演じられる
試合や大事な場面では、どうしても「失敗のイメージ」が頭をよぎり、不安が増すこともあるでしょう。
でも、そんなときこそ思い出してほしいのは、
「自分はどんなゴルファーでありたいのか?」という問いです。
人には「自分が思い描いた姿になりやすい」素晴らしい能力があります。緊張して失敗しがちな人は、無意識のうちに「緊張して失敗する自分」を繰り返してしまっていることもあるのです。
だからこそ、ピンチのときにこそ、自分にこう問いかけてみてください。
「自分はどんなゴルファーでありたかったのか?」
その問いが、心の軸を戻すきっかけになります。
失敗しても、次の一歩を止めない
失敗したとき、私たちはつい自分を責めてしまいがちです。「またミスした」「なんでできないんだ」と、自己否定してしまうこともあるでしょう。
でも、メンタルが乱れているときにやってはいけないのが、自分を責めることです。自己否定は、次の一打への集中を妨げてしまいます。うまくいかなかった自分も含めて、まずは受け入れること。そして、その瞬間から「次に何をするか」に意識を切り替えることが大切です。
ミスがあっても、それは次の行動を止める理由にはなりません。
むしろそうした経験を乗り越えるたびに、私たちの視野は広がり、ゴルフスイングやプレーの質も驚くほど安定していきます。
最後に
感情が動くことは、人として当たり前のことです。
ゴルフが「メンタルのスポーツ」と言われるのは、心が強い人だけが勝つからではなく、不安や緊張、困難に“立ち向かった”人が、結果を出してきたからだと私は思っています。
大切なのは、感情を否定せずに受け入れ、
そこから次の一打”に向かえるしなやかな心を持つこと。
それこそがゴルファーとして、そして人としての本当の強さではないでしょうか。
次回《ゴルフとメンタルを考える》Vol.3“ うまくなりたい”が“苦しい”に変わるとき— 上達とは、「新しい自分に出会うこと」である