コロナ禍のミシガン ゴルフ事情

2020年12月9日 |

私は例年4月―10月頃までアメリカ中西部のミシガン州に滞在し、現地でゴルフレッスンをしています。ミシガン州の人口は全米8位で約1,000万人、広さは北海道と九州と四国を足したぐらいの大きさです。州の新規感染者数は、夏の間は800人/日程度でしたが、寒くなるにつれて急増し、12月の今は8,000人/日ほど出ています。累計では42万人の感染、死者は1万人を超えます。日本に比べると驚くべき数字ですが、私は元気に暮らしています。コロナ禍での半年間のミシガン生活をご紹介します。

3月2日、ミシガンで最初の感染者が2人出たというニュースが流れ、3月24日に外出禁止令が出ました。4月は連日1,000人を超え、当初3週間の予定だった外出禁止令は、数が減らないために2ヶ月、3ヶ月と延長されました。その間、ゴルフコースも練習場も営業することができませんでした。私は4月10日のフライトでアメリカに入る予定にしていましたが、予約していたフライトは強制的にキャンセルになりました。一時は渡航を諦めようかと思いましたが、6月1日にようやく外出禁止令が解除され、美容室やレストランが営業を再開、少し前倒しで5月18日からゴルフコースも解禁になりました。プロ仲間からレッスンもできるようになったと聞いたので、意を決して6月10日に海を渡りました。去年の11月に日本に帰ってきて以来、半年以上も家と車が使われないままになっていたし、トランプさんは移民政策に厳しく、国外滞在が長いとグリーンカードに影響が出るかもしれないという恐れもありました。

■ガラガラの羽田空港、そして飛行機へ
例年ならデルタ航空のデトロイトー名古屋の直行便を使いますが、復活していませんので羽田からJALで飛びました。当日の朝に乗った新幹線も空港もガラガラで、緊張はしているものの、これだけ人との接触が少ないならリスクも低いだろうと思いました。ビジネス目的で行き来する人がいないからか、エコノミーが一番混んでいて、ビジネスクラスとファーストクラスはガラガラでした。少しアップグレードしてもらい前後左右に誰もいない席を確保、機内では常時マスクを着用し、食事は火が入ったもののみを食べ、ナイフやフォークは持参した次亜塩素酸水をスプレーしまくり、こまめにおトイレへ行って手を洗うようにしました。

■オヘア空港
着陸した瞬間に、疾病管理センターCDCからスマホにテキストが送られてきました。「海外から帰ってきた人は、2週間の自主隔離をすること。同居の家族も隔離しなさい。」というメッセージでした。

一番緊張したのはイミグレーションです。いつもよりはすいていましたが、それでも長い列ができていて待たされました。色々な国から来た人が集まりますし、室内ですし、ソーシャルディスタンスは守られていませんでした。私はこのためにKN95マスクを用意していました。アメリカに入国する際にはPCR検査も問診もありません。そのまま国内便にも乗ることができます。オフィサーとのやりとりは5秒で完了、いつもと変わらないプロセスで少し拍子抜けでした。

■ミシガンの生活
無事にミシガンの家に着いた後、まずは2週間の自宅待機をしました。待機期間中は仕事や学校へは行けませんが、食料品の買い物など必要な外出はしていいことになっています。当局からの経過確認などは一切ありません。幸い私は何事もなく待機期間を終え、本格的に生活を始めました。
州が決めたリスクレベルがありまして、一番緩いAから厳しいEまで5段階あり、屋内・屋外で集まることのできる人数や、営業していい業種・施設などが細かく定められています。州は8つのゾーンに分けられ、感染者数や医療体制などに応じて、ゾーンごとにリスクレベルが決められます。私の住んでいる地域は、夏の間はレベルC(下から2番目)で、屋内は10人まで、屋外は100人までの集まりが許されていましたが、寒くなってから第二波が到来し、11月18日より州全体が最高レベルEに上がりました。

現在レストランはテイクアウトとデリバリーのみ、店内飲食はできません。映画館、ボウリング場、博物館などは閉鎖されています。小中学校は対面とオンライン授業のハイブリッド、高校大学は実習以外の授業は全面オンラインに戻ってしまいました。感謝祭やクリスマスなどイベントの季節ですが、家の中での集まりは2世帯10人までと決められています。大企業の出勤率は10%程度、来年6月までリモートワークが決定している会社もあります。朝夕のラッシュアワーはほとんどなく、どこへ出かけるのにも運転のストレスがなかったのは助かりました。

■エッセンシャル・ビジネス
3月末から6月にかけて行われた外出禁止令は、英語ではStay-At-Home Orderと呼ばれます。役所・警察や消防・車の修理工場・食料品店・薬局・銀行・ガソリンスタンドなどはエッセンシャル・ビジネスとして営業が認められ、レストランはテイクアウトとドライブスルーのみでした。人々はずっと家にいなければいけないかというとそうではなくて、運動は生命を維持するために必要不可欠であるという観点から、ウォーキング、ランニング、自転車など、屋外でできる運動はエッセンシャル・アクティビティとして認められ、州立公園が無料開放されていました。
ゴルフもこれに含まれるのではないか?とゴルフ業界が州政府に諮問しましたが、残念、州知事の回答はNOでしたので、ゴルフコースは閉鎖されていました。コースの管理はエッセンシャル・ビジネスに入るので、プロやスーパーインテンダント(グリーンキーパー)などのスタッフは、閉まっている間もずっと出勤していたそうです。
これは余談ですが、上に挙げたような公共性の強い施設やお店がエッセンシャル・ビジネスであるのは理解できるのですが、州に多額の納税をして財政を支えるような大きな産業も、特例としてエッセンシャル・ビジネスになることがあります。例えばミシガンの主力は自動車産業なので、これがエッセンシャル・ビジネスとして認められて、他の業種を尻目に5月半ばから工場が再開されました。でも他州では閉鎖されていたために、部品が思うように調達できないという問題が起こったそうです。観光が主力のアリゾナでは、ゴルフコースがエッセンシャル・ビジネスに入っていました。
知事や州議会が共和党か民主党かによっても、コロナの対策は大きく異なりました。ミシガンは民主党が強い州ですので、厳しいほうだと思います。

■ゴルフコース
ミシガンでは5月18日にゴルフコースの営業が許されました。再開したばかりの時は、クラブハウス内に入ることができず、予約と支払いはオンラインのみで行われました。乗用カートは使用禁止、歩いてラウンドしなければなりませんでした。そこで手押しのプルカートがバカ売れして、eBayでは高値で取引されたとか。2週間後から乗用カートが解禁になり、最初は1人1台とされ、その2週間後から2人でシェアすることが許されたものの、真ん中にビニールの衝立がつけられました。

6月7月とどんどん規制は緩んで行き、カートの衝立はなくなり、クラブハウスの中にも入れるようになりました。チェックイン、おトイレ、食べ物を買いに行く時など、建物の中に入る時はマスクをしなければなりません。レストランでおトイレなど席から動く時もマスクを着用します。ゴルフコースに限らないことですが、マスクしない人だけでなく、マスクしない人に入場を断らなかったお店側にも、最大500ドル(約5万円)の罰金が科せられることがあります。

バンカーのレーキ、ボールウォッシャーなど、コース内で不特定多数の人が触る可能性のあるものはことごとく取り払われています。カップの中にはウレタンが入っていて、カップインしたボールを取るときに周りを触らないような工夫がされています。

■ルールは柔軟対応
ピンフラッグは手で触らず立てたままにしておくこと
強く打ったパットが、詰め物のせいで浅くなっているカップにいったん入って飛び出たとしても、「ピンがなければ入っていた」と同伴プレイヤーが認めれば、カップインしたことにできる
ならしていないバンカーでライの悪いところにボールが止まったら、平らなところに置き直すことができる
など、コロナ禍でのラウンドは柔軟に対応するようUSGAがローカルルールを提案しています。

■ゴルフレッスン
ゴルフレッスンはその性格上、接触・接近を避けられないため、今年は特に神経を使って仕事をしました。感染防止として、私は常時マスクを着用し、生徒さんが変わるときは手指消毒をしました。あらかじめ過去2週間の健康状態や渡航歴をお聞きしてからレッスンをしました。幸いにも、今のところ私の周りに検査で陽性になった人はいません。早くワクチンや治療薬が確立して、来年からは平常通りのレッスンができることを祈っています。

■生活全般
元々ミシガンで私が出かけるところと言えば、ゴルフコースと練習場、食料品店、たまにレストランやデパートに行くぐらいでした。ラウンドする仲間は固定にして、不特定多数の人と交わらないようにし、人のクラブや持ち物は触らない、近づかない、ラウンド後の飲食はしない、気をつけることは増えましたが、ゴルフさえできればシアワセです。外食は外のパティオで、6ヶ月の間に3-4回ぐらいしました。

寒くなってからも一人で遊べるように、室内練習ネットとシミュレータを買いました。

買ってきた商品は全て除菌ティッシュで拭き取ってから冷蔵庫にしまい、外から帰ってきたら洋服は着替えて洗濯し、ゴルフや仕事から帰ってきたらすぐシャワーを浴び、車のハンドルやドアノブなどを毎日除菌する、などなど、神経質になるとキリがないですが、元々の手洗い・うがいの他に今年から加わったエキストラの作業も、慣れると苦ではなくなりました。

■こんなに厳しいのになぜ感染者が多い?
日本とは違って、アメリカは知事の権限で休業要請や外出規制をかけることができます。私は厳しく法律を作ってくれた方が安全に感じるのでありがたいと思っていましたが、アメリカ人は他人(政府)から命令されることを嫌うそうです。知事はスピーディに細かく規制を変えて一生懸命対策しているように見えますが、感染者数はうなぎのぼりです。
さすがにキス・ハグをする人はほとんど見かけませんでしたが、外のパティオで盛り上がってビールを飲む米人ゴルファーを多く見ました。確かに夏の間は緩んでいたように見えました。英語は日本語よりも破裂音が多くてツバが飛びやすいし、腹の底から大きな声を出して話す人も少なくありません。まあそんな人たちには近づかないようにして(笑)、今年は特に、清く正しく?生活しました。

■そろそろ帰国します!
今年は渡米が遅かったために、帰国も遅めになってしまいましたが、12月11日に帰国する予定でいます。美しかった紅葉も終わり、時々雪が降るようになってきました。

帰国に備えて家にこもって安全に暮らしております。帰国後2週間の自主隔離をして、年明けからゲンテンに復活します。楽しみにしています。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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この記事を書いたのは

野村 祥子

野村 祥子

皆さまいかがお過ごしですか?
12月から日本でレッスンを再開させていただきます。
コースでお会いできることを楽しみにしています。

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