先日、戦後初の三冠王とプロ野球監督として長らく活躍された野村克也氏が亡くなられました。球界内外問わず多くの方が追悼と感謝のコメントを出されていました。これほど多くの方がコメントを出されるのは野球人としての実績だけではなく、多くの人から尊敬される人格をお持ちであった人物だったということを感じます。個人的にも野村氏が出されるコメントや人となりに惹かれていました。
野村氏はお金を稼ぐことや仕事で成果を出すことよりも人を育てることが難しいし尊いことであると述べています。私たちゴルフコーチはゴルファーを育て、導く立場であります。野村氏の言葉を胸に刻みゴルフコーチングにあたりたいと僕は考えています。
複数のコーチからゴルフ指導を受けたことがある方はコーチによって教え方が全く違うことがわかると思います。コーチのアドバイスを聞いてすぐに上手くなった人、またそうでない人、アドバイスが合わないと感じた方も多くいらっしゃると思います。私はこれまで5人の人からゴルフ指導を受けたと思っています。これまで受けた指導者から指導を受けて自分のゴルフのパフォーマンスが上がったと感じたことは実は少ないです。しかし指導を受けて「何一つ無駄ではなかった」ということを感じてます。
一般的にはアドバイスを受けてパフォーマンスが上がり、相性が合うコーチが自分にとっていちばん良いコーチになると思います。私はまったく違った見方をしていて、パフォーマンスを上げるための考えるきっかけをくれたコーチがいちばん魅力的ではないかと考えています。スポーツ科学を習っていた時期にスポーツ技術は科学技術と同じく日進月歩で進化するということを知りました。良かったアドバイスでさえ時が経てばパフォーマンス向上にそぐわないアドバイスになる可能性があるのです。私は5人の指導者からスイングの方法などゴルフの表面的なところではなく、プレーの根幹となる部分の指導を多く受けてきたことがよかったと思っています。
ゴルフは孤独なスポーツです。あくまで最後に答えを出すのは(どのようにプレーするかを決めるのは)自分です。誰かに言われたことではなく、自分にとって納得のできることを自分で見つけ出せるかがゴルファーとして大事になってきます。私はコーチングする中で短期的なアドバイス(クイックチップなど)はあまりコーチングする中では好んでいません。それよりもゴルフプレーやゴルフスイングを構造化して、俯瞰して捉えられるようになってもらいたくゴルフのコーチングをしています。それによってすぐ効果上がりづらく上達しない人もいると思います。色々な意見はあると思いますが、私はゴルフを「早く上達」する必要はないと思っています。むしろ時間をかけて覚えたことのほうが尊いことだと思っています。
野村氏の話に戻りますと、野村氏は選手が自ら考え動くための指導を重要視されていたようです。野球に限らず優秀なスポーツ指導者ほどそういった主体性を育てることに重きを置いています。しかしゴルフにおいては少なくとも国内では、技術指導(そして結果)を重要視されている傾向はあると思います。早く成果がでることは何事にも変えがたい嬉しさはあります。しかし誰かに言われたことを鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えて決断することがゴルファーにとって必要なスキルであると思います。そうしたプレーするための基礎を固めるコーチングをこれからもしていきたいと思っています。
野村克也氏に哀悼の意を捧げるとともに自分への戒めを込めて。