今回は、ゴルファーの友・乗用カートをご紹介します。皆さんは歩いて回るのと、カートに乗るのとどちらが好きですか?スコットランドではプルカートを引きながら歩くゴルフが主流だと聞きます。アメリカにも、多くはありませんが、キャディにバッグを担いでもらい歩いて回るコースがあります。オレゴンのバンドンデューンズやウィスコンシンのウィスリングストレイツでは、幅広のカート道はなくて、獣道のようなトレイルが1本あるだけです。コンクリートの道が視界に入らないほうが、コースがすっきり綺麗に見える気がします。
上の2つはリンクスタイプのコースなので歩くのは比較的楽ですが、ホールとホールの間の距離が長かったり、起伏があったりするコースでは、乗用カートがありがたいですよね。
ちなみにPGAでは、「乗用のカートは、カート(cart)とは呼ばずに、カー(car)と呼びなさい。あれは車である。カートとは、手で引くプルカートのことである」と教わりました。日本のメーカーのサイトも調べたら、ちゃんと商品名は「カー」になっていました。でも実際の現場では誰も「ゴルフカー」なんて呼んでいませんでしたので、ここでは素直に「カート」と呼びたいと思います。
走行ルール
日本では5人乗りの、カート道を電磁誘導で走るカートを多く見かけます。アメリカのカートは2人乗りで、人が運転します。
ミシガンのコースで働いていた時は、勢い余ってカーブを曲がり切れずにバンカーへ突っ込むとか、若者が夜中に侵入して暴走して芝を荒らすなど、1年に一度ぐらいの割合でカートの事故が起きていました。日本の電磁誘導は少し鈍くさいですが、事故防止に役立っていますね。アメリカでは、多くのコースが「90度ルール」を採用しています。カート道かラフを前進し、ボールの近くまで来たら直角に曲がってフェアウェイに入ります。ボールのすぐそばまで行けますから楽チンです。
ホールとホールの間、ショートホール、グリーンやティグランドの周りはカート道のみを走ります。地面がぬかるんでいる時は、芝生への乗り入れが禁止になります。雨が降り出し途中からルールが変わると、ラウンド中のプレイヤーにスタッフが知らせに来ます。「カートパスオンリー」の指示が出たら、カートはカート道しか走れません。晴れているのに前日の雨のせいでカートパスオンリーになっていることもあります。いつもより多く歩かなければならないので、アメリカのゴルファーはこれが大嫌いです。
15年ほど前ですが、ミシガンでアーノルドパーマー設計のパブリックコースがオープンした時、カートのルールは”Carts on Fairway Only”でした。ティオフする前にスターターから「まだラフの芝生が根付いていないので、ラフには入らないでフェアウェイだけを走ってください」と言われました。珍しいルールだと思います。
カートのメーカー
アメリカでは、E-Z-GOのシェアが41%、Club Carが57%、この2社でシェアのほとんどを占めます。ヤマハもたまに見かけますがアメリカでのシェアは2%、日本では75%強を占めます。フロリダのPGAマーチャンダイズショーに行ったらいろんなデザインの次世代カートが展示されていました。これはカートの域を越えていますね!
主流は電気とガソリン
乗用カートの燃料には電気、ガソリン、天然ガスの3つがあり、主流は電気とガソリンです。アメリカでの割合は電気のほうが少し多く(6:4)、日本ではおおよそ半々だそうです。電動カートのほうが静かでスムーズですし、排ガスが出ないため環境に配慮したイメージが強く、人気があります。カリフォルニア州にはガソリンカートを禁止しているカウンティがいくつかあるそうです。アリゾナなど雨の少ない南部の州では、屋根にソーラーバッテリーがついたカートが増えています。
電気かガソリンかはコースコンディションや施設の環境によって使い分けます。
以前は電動カートはパワーが出なかったため、アップダウンの激しいコースではガソリンが重用されましたが、今はほとんど出力の差はなくなりました。電気のほうがガソリンよりも車体が重いので、水はけの悪いコースや組数の多いコースでは、ガソリンカートを使ったほうがコースには優しいです。
4人乗り(kg) | 2人乗り(kg) | |
---|---|---|
ガソリン | 456 | 332 |
電気 | 548 | 440 |
ガソリンカートのほうが高価で、部品数や機構の複雑さからメンテナンスにもよりお金がかかると言われますが、いっぽうで電池は2年〜5年で交換しますし、修理を業者に依頼しなければならないケースが多く、その費用を入れると両者のコスト差はあまりないそうです。
屋内にカートを保管できる施設があるかどうかも重要で、充電器に水は大敵なので、カートを屋外で保管する場合はガソリンを選びます。電動カートは1回の充電で1.5〜2ラウンドできます。ガソリンタンクは7ガロン(27L)で、約30ラウンドできるそうです。
ミシガンではコースが閉鎖される冬の間に、リース切り替えや買い替えを行います。コースによっては、春に再開した時に急にカートがボロくなっていたり、逆にロゴシール付きのピッカピカの新品カートが導入されていたりすることがあります。コースの業績がカートの質に如実に反映されるのが面白いです。
特別なカート
一般人の感覚ですとカートはゴルフ場で借りるものですが、コース内に住んで自分のカートを持っている人たちもいます。メルセデスやロールスロイスなどのカスタムカートも人気です。クラクション、ブレーキランプ、アルミホイール付きタイヤなど、オプションがたくさんあってゴージャスでかっこいいです。別荘地では、カート用の可愛らしい小さいガレージドアがついている家をよく見かけます。
アメリカでは途中に茶店がないコースが多く、そのかわりカートで飲み物やキャンディバー、ナッツなどスナックを売りに来てくれます。ビバレッジカート、略してベフカート(bev cart)と呼ばれます。混み具合や時間帯によってベフカートを出していないこともあります。アテにしていたのに9ホールずっと喉が渇いてラウンドしていた、などというツラい目に遭わないように、ショップであらかじめ、”(Are there) bev carts on the course?”と聞いておくと、ちょっとツウな感じです^^。
どうして左ハンドル?
アメリカでは普通の車もカートも左ハンドル。私は年間150ラウンドもしていたので、左の頬と左腕ばかりが日焼けして、未だにシミも多いです(笑)。
日本に戻ってびっくりしたのは、日本のゴルフカートも左ハンドルだったことです。日本製のカートが主流なのに、なぜ左ハンドルなんだろう?と思って調べてみました。日本ではアメリカ製のカートが最初に導入されたので、日本のメーカーが生産を始めた時も、すでにゴルファーが慣れていた左ハンドルを踏襲したそうです。また、右足で操作するアクセルとブレーキの両ペダルは、通常中央ではなく右寄りに配置しますが、右ハンドルだと右前輪がじゃまをして配置しにくいのだとか。なあるほど。レッスンで自走する時にうっかり右側通行してしまわないように、気をつけま〜す。
カートの世界は奥が深いですね。今年の夏もミシガンに滞在して楽しいネタを探してお届けします。引き続きHello Sachiko!をよろしくお願いいたします☆