兵庫県神崎郡市川町というところにアイアンヘッドの製造現場を見学にいってきました。
今回はそんなマニアックな世界をほんの少しご案内します(笑)
アイアンヘッドの製造方法は主に金属を溶かして型に流し込んで成型するロストワックス(鋳造)製法と、加熱した軟鉄を金型に入れて加圧成型するフォージド(鍛造)製法の2種類があります。
鍛造製法によるアイアンヘッドは一般的に打球感が柔らかく、ライ角やロフト角の調整も出来るため、上級者で使用率が高く、プロゴルファーが使っているアイアンヘッドはほぼ軟鉄鍛造製法で作られています。
なぜ兵庫県まで行ったかと言いますと、この市川町というところが、軟鉄鍛造アイアンの原点だからです。
日本にゴルフが入ってきたのが1903年(明治36年)。
兵庫県の神戸ゴルフクラブが日本初のゴルフ場として開場しました。
その後は長崎(雲仙ゴルフ場)、東京(東京ゴルフ倶楽部)、神奈川(富士屋ホテル 仙石ゴルフコース)とゴルフ場が作られ、1928年(昭和3年)兵庫県の広野ゴルフ場建設に際し、グリーンにカップを入れる穴を空けるためのカップ切断用具の製造依頼が川辺村(現在の市川町)の鍛冶工にありました。
その際にアイアンヘッドも研究材料として持ち込まれ、鍛冶屋森田清太郎氏によって鍛冶(かたなかじ)の技術を応用した鍛造(たんぞう)製法によって完成されたそうです。
以来、市川町ではゴルフクラブ製造が盛んで「共栄ゴルフ」や「三浦技研」といった海外でも高い評価を受ける製造メーカーが軒を連ねています。
アイアンの製造工程は「鍛造」→「研磨」→「仕上げ」という主に3つの工程を進みます。
今回全ての工程を見せていただきましたが、中でも技術に差が出る「研磨」の工程をご紹介します。
今回作業を見せていただいたのは下崎一夫さんという研磨職人さんで、アイアンを削り続けて50年!
有名メーカーのウェッジや、現在活躍中のプロゴルファーのウェッジも手がける市川町が誇るゴッドハンドです。
鍛造は下の写真のような型に熱した鉄の塊をいれて叩いて成形していきます。
その工程が終わるとこんな感じで熱で酸化したアイアンヘッドが出てきます。
この時点ではスコアライン(溝)はなくツルツルですので、溝は打刻で入れてきます。
そして紙ヤスリが回る機械で削ってヘッド形を整えていくのですが、これが凄い。
実際に削っている様子です。
元の状態から50gほど削って形を作っていくのですが、この工程でフェースの形、ソールの形はもちろん、スイートスポットの位置(重心位置)や、ヘッド重量が決まります。
ですから製品はこの「研磨」という工程によって特徴が作られていくわけですね。
下崎さんは「触っただけで重心の位置や重さが分かる」そうで、削り終わったヘッドを機械で計ると1g違わず見事に全て同じ重さになります。
しかも違うデザインで削っても同様に同じ重さに仕上げられるそうです。
詳しくお見せできないのが残念ですが、特別に作られるヘッドの仕様書が工場には置かれていて、リーディングエッジの形、ソールの形、ネックの角度、重さなど細かな要望にそってウェッジを削っていました。
如何でしたでしょうか?
みなさんが普段何気なく使っているクラブも、こんな職人さんが手を加えて作られたものかもしれませんね(^^)
ゴルフは道具を使うからこそ難しい反面で、道具を選ぶ楽しさもあります。
今回は少しマニアックな内容でしたが、こんなマメ知識も増やしながら、ぜひゴルフの楽しみの幅を広げてみてくださいね〜